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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
各※(二の字点、1-2-22)雄才だ」
「これ、これ。長治の叔父どの」
怺えかねたかの如く、秀吉が、上座からその耳を引っ張るように呼んだ。
「何だ、ぶつぶつ。いったい其方のいおうとしている要旨は、意味は」
「やあ、お耳に触りましたかの」と、賀相も太々しいところがある。年からいえば秀吉の親ぐらいな甲羅も被っているので、びくともする様子ではなかった。
「つまりは――でござる。御身のために申せば粗忽にこの中国へ懸り給わば由々しき大事を引き起し候わんと、案じるのでござる。こちらも緩々と軍備を固め、毛利方の小城枝城をぼつぼつ攻め落されて後、よい虚実を計って大軍を動かさるべきでないかと考えまするのでな」
「要らざる事申すまい」
秀吉はほんとに怒った。そして賀相や三宅治忠の面を正視してから烈言した。
「其方たちは、唯、筑前が先手を勤め、わが命を奉じて、奮戦すればよいのだ。左様な根本の方策戦略は、信長公より命をうけて、一切この秀吉の方寸にあること。おぬしらの容喙はゆるさぬ」
「ははあ、左様なもので」
賀相は自若として、隣の治忠へ、
「……じゃそうでござる。何と、もうこれにおる意義はなかろうではないか。