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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

――そうすでに看破していた吉川家の部下は、護送の途中、備中松山のふもとの河部の渡しへかかったとき、渡舟を待つ間に鹿之介が汗を拭っているすきを窺い、うしろから不意に太刀を浴びせた。

鹿之介は川へ飛び入ったが、かねて謀っていたことなので、岸から船中から投げ槍を下し、また相継いで川へ飛び込んで格闘し、ついにその首級を挙げてしまった。

鹿之介の血は、一時、甲部川を紅にした。

年三十九だったという。

この報告を聞いたとき秀吉は、

「可惜、男を」

と、官兵衛、半兵衛などを顧みて、さも傷ましそうに舌打ちした。

が、黒田官兵衛は、すぐそれに答えて、彼の傷む胸をなぐさめた。

「上月城一つは、ついに敵へくれてしまいましたが、それに何十倍するものを、間もなく此方が取るでしょう。この局面たりと、決して、お味方の負けにはなりません」

「……ふむ、あれか」

秀吉にも、心待ちに、待たれるものがあった。それは、さきに官兵衛が、陣中を抜けて、密かに使いに通っていた備前の浮田直家の向背であった。

平井山の秋

一

秀吉が但馬から帰陣すると、信長の本軍は、一翼を加えたので、本格的に、三木城の攻囲にかかった。