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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

「よくぞ、よくぞ、そう覚った。さらりと、非を覚り、踏み直すこと、また武士らしさぞ。信長とて、何の宿意ものこすまい」

自己の歓びと、彼等の安心へ誓うために、信長は二人の降将にむくゆるに、莫大な金銀と恩賞を以てした。

これまた、いかに信長が、この事件に頭を悩ませ、この一解決にすら歓びを抱いたか、心の奥のものをあらわしている。

――かくて。

いよいよ伊丹一城へ向って総攻撃を開始したのは、もう十二月に入っていた。しかし陥ちない。さすがは頑強に自負している荒木勢だけのものはあった。その難攻にあたって、寄手の一将万見仙千代は討死をとげた。それほど猛攻して、幾たびか城壁にまで迫ったが、伊丹城はゆるぎもしなかった。

「これ以上、あせるは愚だ。捨てておいても陥ちるものを」

信長は、要路要路に附城を築かせ、いわゆる持久包囲の策をとらせ、年の暮には安土へ帰っていた。そして軍勢の一半を播州の援軍にわけて急下させ、一面、本願寺勢との連絡をいよいよ固く遮断した。そうした陣容はすべてこの機会に毛利の大軍が海陸から東上して来るものという予想のもとに万端、改編されたものだった。

信長の観るところ、村重の強がりは、要するに、自力そのものではなく、やがて毛利輝元の水軍が大挙して摂津の岸へ上がって来るという――謀反前からの誓約を恃んでいるものに