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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

――が、この玄米と菜などは日頃噛む十層倍も根気よく口のなかで糊にして胃へ入れる事に依って、かなりよく栄養を摂ることができた。むしろ困難なのは運動のできないことだった。時々はこの獄内の檻の中の虎みたいにのそのそ歩いてみた頃もあるが、近ごろは衰弱のせいか、それが非常に疲れる。供与だけの食物では足らなくなる。余りに飢えるとしまいに空の胃ぶくろが腹の中で暴れ抜くのが何とも苦しい。

「じっとしているに限る」

自ら、坐禅をくむ。

少年の頃から禅は心がけていたが、それは到底、禅に徹していたどころか、真似事にすぎないものだったとみえ、意識するとかえって妄想を掻き立てるような心態になり易い。――で、結局、何もせずに、ただぼんやりありのままに在ることにした。うすら眠くなれば眠る。眼をあきたければ開く。半眼になったら半眼になっているとして――。

「よくよく命は惜しいものだ」

われながらその執着には感心する。ひとから考えたら、何の為に生きているか、死んだほうがましであろうに――と定めし思うであろうにとも知りながら、やはり死にたくはなかった。

だが、この未練は、自ら顧みて、そう恥じるものではないともしていた。