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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
もし、わが子官兵衛が獄中に殺さるるとも、それ君命に殉ずるは武士の本分。宗円とてなに悔もうぞ。……それを恋々小情の迷いにとらわれ、いまもしわが姫路の一党が、信長公と結べる一たんの盟いを破棄し、義に背き信を捨て去らんか、たとえふたたび官兵衛がこれへ生きて還ろうとも、われらの上に武門の名もなし誇りもなしじゃ。ただ辱を負うて武人の中に禄を拾うて生くるに過ぎず、人と生れさむらいの道に立ち、何の生きがいやあるべき。……迷うまでもないことよ。官兵衛は見殺しにせい、きっぱり思い捨てて策を立てい」
隠居宗円はそういって、すぐ奥へもどってしまった。あとに粛たる大勢が涙をすすり合うのも聞えぬ振りして――
熊野牛王の誓紙は実にこのあとですぐ持ち出されたのであった。そして十三名が血判した。
「ご隠居さまのお覚悟を慥と伺ったからには、もう百人力というものである。織田方には二心なしだ。飽くまで荒木村重の曲を撃たずにおくものではない。――さりながらまた、臣として、獄中の主を見ごろしに捨て去らんなどは思いもよらぬこと。われら十三名は、各※(二の字点、1-2-22)すがたを変えて、敵地の伊丹城中に潜伏し、たとえいかなる臥薪嘗胆の苦難をしのぶとも、八幡大菩薩、産土の神も照覧あれ、臣等の一命に代えても、かならず官兵衛様の身を救い出してみせる」