轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
この亘様が、いつの間にかお菊どのを見ておるらしい――何でも町へ出られた折、お菊どのが、小女に買物を持たせ、白傘さして歩いていたのを見かけられたものだとかいうのだな。……以来、おれの嫁は、あれに限る。あれでなくては貰わんといっておられるのだ」
「……へへえ?」
ようやく新七は少し返辞らしい声が出せて来た。八弥太は大真面目なのである。嘘とは思われない。
「……だが何せい今は、織田軍につつまれているこの戦陣の中。まさかご祝言も運べますまいと、わしがいった。するとだ、亘様には、何も今が今というのじゃない。其方から新七へ約束だけしておけと仰っしゃるのだ。そしてまた、仰っしゃることもおもしろい。もしやがて、織田軍が伊丹城へ襲せかけて来たおりに自分が討死したら、その約束は元よりないものとしてどこへなりと、お菊どのの好きな家へ嫁ぐがいい。……ただその日までの約束でいいといわれるのだ」
「ははあ……、左様ですか」
新七は頷けた。彼の職業がら、今時の若い武士たちの気性はよく分っている。恋をしようと、一個の美い鎧具足を註文しようと、彼等のあいだには常に、夢寐の間にも、「明日は知れないいのち」