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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

同志たちの至誠が天に通じてこの人をいま地に降し給うかとさえ思われて、神助へ手を合わせたいほどだった。

(……が。困るのはただ、お菊の気もちだが?)

新七はただそれに迷った。しかしもし官兵衛の死が救われ、義胆の同志十三名がこれによって望みを遂げ得られるとしたら、義妹ひとりの否か応などは問題ではないとも考える。ましてその相手の若武者も、ひとしく織田軍へ心をよせ、自分たちの同情者であるというにおいては。――と彼は肚をすえた。

「八弥太様。この通りでございまする。何事も、仰せにおまかせいたします」

彼は地に坐り直して、加藤八弥太のすがたへ、両手をつかえた。八弥太はまた、その背を叩いた。

「よし。それでわしも顔が立った。そちらの事にも充分力をそえる。……が、今夜はこれで別れ、いずれまた、熟議いたそう」

彼に別れて、わが家へ帰った後も、新七は何だか信じられない気がした。けれど、数日の後、八弥太の使いがまた彼を迎えに来た。そしてこんどは伊丹の侍小路の古びた邸へ彼を導いた。そこは八弥太の住居で、彼の主人の伊丹亘が来て待っていた。

亘と新七とは、それ以後、ここで数回落ち会った。