轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
――振向いて、御着城を二度ほど見ていた。
「生きてここへ帰る日はないかもしれない」
と、官兵衛も多少の感傷を抱いていたものとみえる。
真心はついに人をして伏するほかなからしめた。彼の信念は徹った。日頃のねがいは届いたのである。
(小寺政職を主とする御着一城のともがらは、織田方に味方する。しかし策として当分は極力四隣へ秘密を保って行う)
ということに、夜来の評議は、とうとう一決を見て、落着いたのであった。
その結果、
(たれが織田家に使いするか)
となって、当然のように、黒田官兵衛こそと、主君からも家中からも挙げられて、彼がその任に当ることになった。
そう一致したからには、一日も寸時も早くと、彼はすぐ君前に暇を乞い、同座の人々とも袂別して、あの席からすぐに立って、馬を姫路へ向けて来たものであった。
信長はいま岐阜城にいると聞く。その岐阜へ行くべく上方へ出るには、姫路を経るのは順路であるが、道のついでに、彼は生家の姫路城へ立ち寄って、母はもう世に亡いひとだが、老父の宗円にもいとまを告げ、またまだうら若い妻と、ことし八歳になるわが子にも久しぶりにこの顔を見せて行きたいと思った。