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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

どこへお通し申しあげますか」

と、主君の意をたずねた。

「なに。官兵衛が。……あの黒田官兵衛が、獄中から救い出されて来たというか」

「左様でございまする。ほとんど瀕死のご容子で、戸板に臥されたまま、滝川殿のお心入れに依る医師、ご家中など付添い、黒田家の侍衆数名もついて参りました」

「ふうむ。……ではなお今日まで、彼は伊丹の城中に捕われていたものか? ……」

「疑いなく、昨年十月以来、まる一年、荒木村重のために、城中に監禁されて、無慙な目にお遭いになっていたものと思われまする」

「やはりそうだったのか。……城中の消息はいささかも知れなかったゆえ、よもやと存じていたが」

信長のことばは一語一語慚愧と長嘆であった。また驚愕のうちにこもっている深刻な悔いでもあった。一時は茫然それに打たれて、眼のまえの者に、答えを与えることも忘れているような面持であった。

扈従のひとり前田又四郎が、主君のその当惑を救うように、かたわらからそっといった。

「ともあれそれがし参りまして、官兵衛どののご容体を見、仔細をただし、その上でよろしきように致しておきましょうか」

「うむ。そうせい。そうしおけ」