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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
いつも案内に従う丹羽五郎左衛門長秀も気が気でなく、
「この通りに、夜も日も、総力で急がせておりますれば」
と、いうしかなかった。
天守台の七重櫓が総体の中心であるだけに、ここの工事は最も慎重でなければならず、また信長の注文もなかなか難しいのである。
地下の一重は倉庫に。二階は、総柱二百八十本立て、間口二十間、奥行十七間、それを十二畳の書院、次四畳、北三十二畳、南三十二畳、次八畳、東二十畳、次八畳、控え三畳、等々たくさんな部屋数に仕切り、欄間や壁障はすべて総漆、襖には、狩野永徳そのほか当代の巨匠が筆をそろえて鵞の間、芙蓉の間、墨梅の間、遠寺晩鐘の間などと呼ぶにふさわしい彩管を揮っている。
三重の楼、四重、五重、六重と上にゆくほど、間数は少なくなるが、工芸的な構成はむしろ精を極めて、また趣を更えてある。
「五郎左衛門。正月には、ここで屠蘇が酌めような」
まだ襖も入らない三重の廊下に床几をすえて、瀬田、比良、また湖水一面の眺望を、すでに恣にしながら、信長はまたしても、長秀から期日の言質を取ろうとするような口吻である。
長秀も、閉口の体だったが、
「それはもう正月までには……」