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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
二
、いぶかしいといえばいぶかしかった。
礼拝を終って、戻ろうとしたこの俳優――ハッとして立ち止った。
思いがけなく、銀杏の蔭から声を掛けるものがあったのである。
「これ、大願。一そう根を詰めねば成就いたさぬぞ」
二
不意に、奇怪なことを銀杏の樹蔭からいいかけられて立ちすくんだうら若い女形――胸の動悸をしずめようと、するかのように、白い手で、乳のあたりを押えたが、つづけて、皺枯れ声が、言いつづける。
「人のいのちは、いつ尽きるか分らぬもの――そなたの大望、早う遂げねば、悔ゆることがあろうよ」
女形は、右の手に持っていた銀扇を、帯の間に――そのかわりに、どうやら護り刀の柄に、そっと、その手を掛けたかのよう――四辺を見まわして、ツカツカと、声のする方へ行った。
そこには、小さい組み立ての机、筮竹、算木で暮す、編笠の下から、白い髯だけ見せた老人が、これから、商売道具を並べ立てようとしているのであった。
「御老人」
と、澄んだ、しかし鋭い調子で、
「只今のお言葉、わたくしへでござりますか?」
老人は、細長い身を、まっすぐに、左手で、しずかに、白髯をまさぐったが、
「左様――そなたの人相、気魄をうかがうに、一かたならぬ望みを持つものと観た――と、いうても驚くことはない――わしは、自体他人の運命を占のうて、生業を立てるもの――何も