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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

二一

用意をおこたらず、十分に手当して、根だやしにいたせ」

「ハッ、よくわかりましてござりまする」

「行け!」

隠居はそう言って、かたわらの蒔絵の手箱から、取り出した、紫ふくさの包みを、投げるように渡した。

ズシリ――と、重たい黄金――

押しいただいた平馬、――闇太郎の技倆は、すでに知ったことではあり、高の知れた仕事に、これは過分の前褒美と、胸をとどろかして、御前を辞して出る。

こちらは闇太郎――

小姓の酌で、遠慮もなく、飲っているところへ、侍が、眼も綾な、錦をかけた三方をささげてはいって来た。

「御隠居さま、お目にかかるべきところ、何かと取り込み、今晩はこれにてお引取りを願うなれど、これは寸志、おおさめ下されるように――とのこと――」

と、前に、三方を置いて、

「おおさめなさい――」

と、帛紗を取る。

下には、杉なりに積んだ、二十五両包が五つ――

「ほう、これは、立派なお引き出ものでござりますが、今晩のところは、こいつをいただいては、心にすみませぬ」

と、闇太郎は、突っかえして、

「御隠居さんに、そう言って下さい。いずれ何かいただきたいものがあれば、改めて、いい時刻にひとりでうかがって、黙っていただいてけえるから――と、ね。