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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一二
「な、この五助、是非とも、そなたと、たった二人、人知れず、相談することがある――そなたの胸の中も、よううけたまわって、悪しいようにははからぬ。拙者の行くところまで、これから、同道してたもるであろうな?」
「は、はなして――」
と、浪路は、抱き締められながら、骨太な腕の圧迫や、毒々しい体熱のぬくもりに、言うばかりない嫌悪を感じて、相手の言葉が、耳にも入らず、悶えた。
「お放しなされて――わたしは、行かねばならぬところが――」
「は、は、は――例の、雪之丞とか申す、女がたの許へであろう――それもよかろう――親も、家も栄華も捨てて、それほどに思い込んだ男の許へ、決して、まいッてならぬとは申さぬ――が、まず、拙者の話を聴いてからになされたい。決して悪い話ではない。お為めになることだ」
「いいえ、わたくしは、是非とも、まいらなければ――」
「なりませぬと申すに!」
と、五助が、やわらかな肉体との接触に、毒血が沸き立ったように、
「浪路どの、子供だ子供だと思ううちにいつか、恋にも狂うようになられたを見ての、拙者、これまでのそなたと、考えられなくなった。――浪路どの、悪しゅうはせぬほどに――」