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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一一

雪之丞は、了解した。

「いたして見ましょう――広海屋さんとも、いつでも御懇意に出来ますように存じますから――」

一一

その場の胸中の憤懣に、日頃のつつしみを忘れ、軽はずみに事をいそいで、大事をあやまろうとした雪之丞、測らず邂逅した孤軒老師から、新しく智恵をつけられ、翌日、翌々日、無事に艶冶かなすがたを、舞台に見せつづけていた。

すると、三日目に、こちらから手を伸ばす必要もなく、広海屋の方から、例の鶯春亭まで、出向くようにとの迎えがある。

早速行って見ると、奥座敷に、長崎屋の姿はなく、福相な広海屋が幇間を相手に世間ばなしをしていたらしかったが、かねて打合せてあったものと見えて、雪之丞の姿が現れると、居合せた男女が、席をはずす。

辞儀が済んで、

「今晩は、長崎屋さまは、お見えあそばさぬのでござりますか?」

と、さり気なく、尋ねると、

「おお、あの男は、昨日今日、商用で大そういそがしがっておるのでな――それはそうと、例の松枝町の御息女、たった今日、向う半ヵ月のお暇を頂き、自宅保養のため、大奥から、お屋敷に戻ってまいられたで、この事を、是非、耳に入れて置こうと思うてな――わしは、お屋敷には伺ったが、御当人には、お目にかからぬ。