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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一〇
――ふ、ふ、ふ、赤ん坊のように眠ってしまったが、いい恰好だよ。それにしても、何てうるさいいびきなんだろうねえ――
ぐうッ、ぐうッといういびきを、聴きすますようにしたお初は、やがて、きちんと坐り直して、後れ毛をかきあげて、自分を眺めなおすようにした。
――なッちゃいないね、お初つぁん、着物は皺だらけ、帯も紐もゆるんでしまって――
一〇
やがて、すっと立ち上ったお初、はだかった襟元、乱れた褄をきっと直して、いい音をさせて、きゅうきゅうと帯をしめ直したが、その気配に薄目もあけず、だんだんいびきを高める島抜け法印を見下ろして、
――お坊さん、あたしはこれで、窖からお暇をして、久しぶりで外の夜風に吹かれて見ますがね――決して逃げやあしない、安心して、お飲りと言った口の手前、すこうし済まないような気がするものの、あたしだって、軽業お初とも言われる女、シラ几帳面のおしろうととは違うんだから、まあ堪忍して頂戴な。
そう、冷たい笑みと一緒に言って、足音を盗んで、窖を去ろうとした。
――と言って、救いの主見たいなお坊さんを、夜寒む、酔醒めで、風邪を引かしちゃあ申訳ない、これでも掛けて上げましょうね。