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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
五
「なかなかもちまして、そのような、悪気から申し上げましたでは、さらさらござりませぬ。一々、ごもっとものお言葉、おふくろにも、立ち戻りまして、申し聴け、おわびに向わせましょうほどに、お気持を、お直し下されまして――わたくしどもは、くりかえし申し上げますとおり、あなたさまのお為めのみを、はばかりながらお案じ申しているばかりでござります――」
すると、それを、聴きすましていた浪路、急に、フッと、涙の顔をあげたが、
「ほんとうに、甚太郎、そなたは、わたしを、あわれと思うていてくりゃるか?」
目を反らさずに、甚太郎、
「申すまでもござりませぬ――たとえば、松枝町さまが、御恩人とは申せ、そなたさまには、恐れ入ったおはなしなれど、乳をさし上げた母親――わたくしはその伜――おん家よりも、そなたさまこそ、くらべようなく大切と、存じ上げておりますので――」
「それならば、わたしの、生き死にの望み――生れて、たった一つの望みを、どうともして、叶わせてくりょうと、日ごろから、念じていてたもっても、よさそうなものと思いますが――」
浪路は、いくらか、怨じ顔に、
「実はたった今も、叶わぬ想いに、胸を噛まれて、うら若い千世を相手に、くりごとを言うていたところ――のう、甚太郎、おもはゆい願いなれど、かくまでの、わたしの苦労を察してくれたなら、