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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一四

。

――ふ、ふん、こいつもやっぱし、男かい? 駄目の皮を被った仲間なんだね? それならそれで役に立とうよ。

お初が、一目見て、そんな風に心に呟いていると、主が、

「まだ、はっきり名乗りもいたさなんだが、拙者は、門倉平馬と申して、いささか、武芸を嗜むもの――して、そなたは?」

と、膝に手を、ぎごちなく言った。

灯の下で見るお初の、思うに増した、すばらしい容色に、五体が硬まったかのようであった。

「わたくしは、黒門町の方で、後家ぐらしを立てております、初と申しますもの――お見知り置きを――」

「はて、お一人棲みでござるか?」

と、怪訝な顔。

「ほ、ほ、ほ、あたくしのようなもの、構ってくれ手が、あるはずはございませんし――」

平馬は、黙った。こうした問題にこれ以上触れてゆくことは、武士の面目に関わると思ったのかも知れない。

「それにしても、いつぞやは、危いところであったな――」

と、思い出したように、ジロリと見て、

「一たい、何ぜにあのようなわけ合いになったのでござるか?」

「詰らぬことからでござりますよ――」

お初は、もじもじするように、俯むいて、

「おはずかしいお話でございますけれど、あたくし達のような、からだが暇で、その癖、楽なくらしをしていますものは、どうかすると、間違いを仕出かし勝ちで――」