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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

七

――相手は多い! 早う、親分お逃れになって――

が、見る見る、ひしひしと取り巻いて来る同心、捕方――

――なぜ、いつまでも、抜かないのだろう。親分は――若し、つかまってしまったら、どうなさるおつもりなのだろう。

見るに見かねて、雪之丞、歯を噛むと、帯の間の懐剣を、ギラリと引き抜いて、立木の蔭を飛び出すと、タ、タ、タと、近づいて、

「御免!」

と、一声、額にかざした紫電のひらめき――

「親分、お逃げなさい!」

と、呼びかけるなり、突くと見せて斬る。斬ると見せて突く。

「助勢が出たぞう! 気をつけろ!」

「親分、おのがれなさい! あとは、わたしが引きうけますほどに――」

「それよりも、おまはんの仕事、しすましたか?」

と、闇太郎が、だしぬけの雪之丞の出現にもかかわらず、驚きもせずに叫んだ。

雪之丞はうなずいて、

「かたじけのうござんす――こよいで、みんな、すみました」

「それはいい――では、このおれにも、心のこりは何もない。さあ来い! 目明しども!」

「親分、悪い! 早う消えて下さらねば――」

「逃げるなら一緒に逃げよう。雪さんどこまでも――」

「あい。そうしましょうか!」