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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
二一
すぐ、そんな風に木ッ片に火が点いたようになるのは、猪武者というものですよ。ほんとうに、雪之丞に、意趣返しをなさるおつもりなら、ちゃんと、陣立てをなすっていらっしゃい」
「陣立て?」
「ええ、あなたが、向う鉢巻で、飛びかかって行ったって、あの手並じゃあ、ちっとばかし、持てあましましょうよ。こないだの、おつれのお武家さんだって、怨みはあるでしょうし、ほかにも仲のいい方がいるでしょう。その方々をかたらって、今度こそ、引ッくくんなさいましよ。一息に、斬り殺したりしてしまっては、面白くないから、ふんじばって、誰も知らないところへ連れて行って、うんと責めてやろうじゃアありませんか――」
お初の目は、ギラギラと輝き出した。彼女は叶わぬ恋人を、あらん限りの愛撫で、よろこばせてやるかわりに、この世からなる地獄の責苦を浴びせかけてやる外はない破目になった。そして、どこまでも、その慾望を突き貫かなければ、我慢がならないのだった。
「そうか、用心に若くはなしだな、なあに、覚悟さえすれば、拙者一人で大丈夫だが――」
と、平馬が言うのを、
「そりゃあ、思い切って、叩き斬るなら、うまくいけば、先生にも出来ましょうよ。