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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
二二
二二
手を取って引き寄せようとする平馬から、お初は軽く擦り抜けて、
「さあ、あたしも、こんなに遅く外を歩くのは厭ですけれど、でも、雪之丞のことを考えると、ムラムラして、とてものんびり御厄介になれませんし、それに、お宅で泊めていただいたら、明日、御門弟衆多勢の目にふれると、先生に御迷惑になると思いますから、今夜は、寒さを辛抱して、黒門町へ帰りましょうよ――そして――」
と、色っぽく、しなさえして、
「そして、雪之丞へ、お互に意趣がえしをしてしまったら、ゆッくり、川向うへでも行って、静かなところで、お目にかかりたいものですねえ――向うじまの田舎料理が、大そう評判ですから――」
「左様か、なるほど、道場内は、何かと窮屈で、落ちついて話も出来ぬな」
と、平馬はいって、それでも、残り惜しそうに――
「何なら、今夜、これから出かけようか――静かな晩だから、左まで寒うもあるまい」
「まあ、楽しみは後からといいますゆえ、今のおはなしの雪之丞の方を、始末してしまった方がようござんす。それじゃあ、こうしましょう――あたしはこれから家にかえって、今夜の中に何かうまい思案をして、明日芝居が刎ねる前このお道場まで、手順をお知らせするように屹度します。