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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
七
」
「浪路さま!」
と、雪之丞は、思い入ったように、貴女をみつめた。
「あなたさまは、しんじつ、そのように、思っていて下さりますのか!」
「わかり切っていること――あの晩以来、一刻とて、忘れたことはありませぬ。夢に見るのはまだ浅い――昼間の想いが、夜よりも深いということを、はじめて、わたしは知りました」
浪路は、しっとりと、雪之丞にもたれかかってしまった。
「のう、雪さま――このわたしを、どうしてくださりますえ」
「そのお心もちが、ほんとうなら――」
と、雪之丞、
「わたくしとて、指も、髪も剪りましょう――そのかわり、一時のおもてあそびなら、死ぬほかには――」
七
二人の手はしっかりと結ばれ合っていたが、浪路の目かおには、からみつくような執念が、ますます燃え熾って来るばかりだった。
「ね、太夫、わたしには、まだそなたのこころが、しっくりと判らない気がしてなりません。引く手あまたの人気役者が、こんな不意気な女なぞを、しんからかれこれ思ってくれるとは、ほんとうとは思われませぬもの――」
「わたくしこそ、本気には出来ませぬ」
と、雪之丞が、上目で見上げて、
「もしほんとうのお言葉なら、いのちも賭けると、たった今申したことを、いつでも行いにあらわして御覧に入れますけれど――」