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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一七

お初は、そんな風に繰返して、

「あの人がそれを知らない訳がないようにしか思われませんけれど――御隠居さまの勢力で、あいつをぐんぐん責めて見たらよさそうなものですのに――」

彼女は、美しい唇を歪めるようにして、

「素ッ裸にして、ふんじばり上げて、ピシリピシリひッぱたいて、海老責めにしつづけたら、白状するにきまっていますよ」

「ところが、それも出来かねるわけがあるのよ――何しろ、この事が、世間に漏れたら、恐ろしいことになるので、どこまでも、穏便、穏便――と、いうわけじゃ」

「いいえ、あんな河原者の一人や二人、責め殺したって――」

お初は、さも、憎々しげに、そんな風に言いながら、今口にした、自分の言葉から、あの艶やかな雪之丞が、真白な肉体を剥き出しにされて、鞭で打たれ、縄で絞め上げられているありさまを想像すると、その光景がまざまざと目に浮かんで来て、一種異様な、官能的な刺戟が全身を浸し、変態的な愉悦にさえ駆られて、狂奮が、胸の血をわくわくと沸き立たせるのを感じるのだった。

お初の、そうした変態的な気持が、彼女の表情を、この瞬間、妙に魅惑に充ちたものにしたに相違ない――