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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一二
そして其日から、彼は弁公の親分のもとに寄食する身となった。
賭博も、女買いも、酒も――世の中で、これほど訳なく進歩してゆく、修業の道はすくなかった。半年もたたぬうちに、いかさま賽のつかいかたも覚えれば、そそり節の調子も出せ、朝酒の、腸にしみわたるような味も覚えた。喧嘩ときては、そこらの度胸一方のやくざどもが及びもつく筈がなかった。もともと若いながら、叩きにたたき上げた武術なのだ。
「そんなこんなで、十九の声をきくころにゃ、内藤新宿の宿場じゃ、めっきり、これで顔が売れてきたものだったのさ」
一二
だが、闇太郎は、売れっ児の若い衆として、地廻りのなかで、顔を利かせてばかりはいられなかった。ひょんな事から、元は家来で、今は兄貴分の弁公が、親分を縮尻ると、彼ばかり、もとの土地に居残っているわけにも行かなかった。
気早やで、ひょうきんで、兎角、やり損いの多い弁公と彼との、大江戸の日影から日影を、さ迷い歩くような、流浪生活は、それからはじまった。
「おれ達は、随分、ありとあらゆる世間を、経めぐったものさ。おれは、武家が嫌いだから、渡り仲間こそしなかったものの、小屋者の真似さえ、やらかしたよ。