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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一九
「でも、今夜は、遅いから、あしたのことに――もう、お前さん、夜更けですよ」
一九
闇太郎と、婆やとの押問答が、二階に聴えたと見えて、晩酌に一本つけて貰って、女あるじ――女親分の留守の間を、楽々とごろ寝を貪っていた例のむく犬の吉むくりと起き立って、鉄火な口調がまじっているので、さては、探偵手先か? それとも、弱身を知っての押しがりか? と、耳をそば立てたが、そのまま、とんとんと、荒っぽく、段ばしごを駆け下りて、
「誰だ、誰だ? 何だ? 何だ? こう、小母さん、退きねえ――」
と、婆やを、かきのけるように格子先を、白い目で睨んで、
「おい、おまはん一てえ、どこのどなただ? よる夜中、ひとの格子をガタピシやって、どぎついことを並べるなあ、あんまりゾッとした話じゃあねえぜ!」
と、まず、虚勢を張って見る。
ピカリと、しずかに、つめたく光る十手のきらめきも見えなかったが、しかし、相手の答えは小馬鹿にしたほど、落つき払っていた。
「は、は、は、むく犬、大した気合だな、度胸だな、機嫌だな? 俺だ――わからねえか? 久しぶりだの――」
吉原かぶりを、解いて、突き出すようにした顔――その浅黒い、きりっと苦味ばしった、目の切れの鋭い、その顔を、むく犬は、一瞥すると、ぎょっとしたように、