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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一二
長崎屋は、食い入るような目つきで、呻いた。
「その商いを、おぬしは、片はしからこわそうとたくんでいなさる――それが友達か?」
一二
「長崎屋さん、そなた、少し食べ酔ってでもいなさらぬか――わしが、そなたの商いを、片はしからたたきこわす! そのようなこと、思うても見なされ、あろうことではない。わしとそなた、二十年の仲じゃ――そなたの仕合せをこそいのれ――」
広海屋が、長崎屋の憎悪に充ちた言葉を聴いて、こう答えて、猫なで声になって、
「それに、この座で、其のような話はちと不似合――商売のことなれば、あとでゆっくり談合いたすことにして、そなたも、まず、機嫌よく、一ぱいすごしなさいよ。福の神は、渋面つくっていると、とかく、向うを向くと、言うによってな――」
「いやいや、わしは、そんな心の閑はない――場所柄も何も、言っていられぬ破目なのじゃ」
と、長崎屋は、あたかも嘲りでも浴びせられたかのように、却って、ますますいきり立ったが、ふと、心を持ち変えたように、急に、両手を膝に置いて、
「これは、広海屋さん、わしが、すこし、からんだ物の言い方を、しすぎたかも知れませぬ――そなたに、折り入っての頼みがありますので、それを、肯いていただきたいのでございますが――」