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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一五
闇太郎は、また、耳を傾けるようにした。ふたたび雁が、過ぎていたが、その淋しく荒々しい声の中に、わが魂の悲泣を聴き分けていでもするかのように――
雪之丞は、これ以上、この新しい友だちの秘密に触れたがる必要はなかった。
「でも、その弁さんとやらは、仕合せな人でござりましたな。お前さんのような、お友だちを持って――」
「おれも、弁公のような奴と、この世で知り合えたのは、一生の思いでさ。いい奴だったよ。こんなおれのような人間を、あいつだけは、人間つき合いしてくれたんだ――生きていると、お前にもひきあわせてえ奴だった。一度、ほんとうにつき合ったが最後、いのちがけだったぜ――」
大賊のひとみが、無限のなつかしみで、うるんで来るのだった。
雪之丞は、この人物に、ますます新な良さというものを感じて、はなれがたなさを覚えたのである。
一五
「面白いもんだね、俺がこんな泥棒渡世になったのも、いってみれば、あの時、お長屋の女房が、俺のことを、こそ泥と間違えて、あんなことをいやあがったからだともいえるんだ。その後の俺は、ずうっと、その商売をやりとおして来た。一度その道にはいってみると、他人にはわからねえ好さも、嬉しさもあるものなんだよ、有りあまる所に有るものを、だまってとってきて、足りながっている所へ、配ってやる――勿論、俺も、その間