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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

八

「ほんとうに、凄いようなところですこと」

と、女装の若ものは答えた。

「よくもまあ、お江戸に、こうした荒れ果てたお寺もあるものでござりますね――もっとも、川向う、お構いうちではありますまいけれど――相馬の古御所の、舞台よりもっと物さびしいすさまじい景色――今度いずれ、こういう背景で、何か演て見とうござります」

彼は、笑みつづけていた。

八

雪之丞の自若とした容子に、驚歎の目をみはっていた一人が、傍の、肩の尖った男にいいかけた。

「なるほど、間柄、貴公から、雪之丞という奴、とんだばけ物と承っていたが、これは又、途方もない白徒だ」

間柄助次郎――これが浅草鳥越の道場持で、こないだ、安目に踏んで、手痛いあしらいを受けた人物だ。

――憎々しげに、雪之丞を睨め下ろしたまま、

「いや、あの時は、拙者も門倉うじも、少し食べ酔いすぎていたからよ。今夜こそは、先日の恨みがある。拙者の手で、皮肉の破れるほど、打ち据えてやらなければ――」

「間柄うじ、そう思したら、遠慮のう、手を下されたがいいぞ」

と、平馬がいった。

「おお、許すとありゃ――」

と、助次郎、今夜も、かなり酔いがまわっているように見えたが、縁側から、沓脱ぎに揃えてあった、庭下駄を突っかけて下りると大股に、雪之丞の側に歩み近づいて、