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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

四

おりた瞬間からこの男、どこぞ遊び場のかえりでもあるような、悠々閑々たる歩きぶりだ。素袷にやぞうをこしらえて、すたすたと表門の方へと廻っていった。

門前にさしかかると、恰度、たったいま、一挺の駕籠が出たところ――

なかなか結構な仕立ての駕籠の、土部家の客用乗物に相違ないが、陸尺が二人でかいているだけで、供はない。

闇太郎は門中をちらりと覗いてすぎる。供待ちにはまだ三、四挺の駕籠が残っている。

――あの駕籠に乗っているのは、てっきり雪之丞だ。そら、この辺にすばらしく好い匂いがプンプン残っているじゃあねえか。

と、鼻をひょこつかせるようにしながら、この磊落な大泥棒は、そのままいいほどの間合をおいて、雪之丞の乗物を跟けはじめた。

駕籠は、早めもせずゆるめもせず、ころ合な速度で、松枝町から馬喰町の方へ東をさしてゆくのだった。闇太郎は首を振ってつぶやいた。

――さあそろそろ一声かけてやろうかな。

四

雪之丞を乗せた駕籠と、それをつける闇太郎とは、しゅうしゅうたる晩秋の夜更けの風が吹きわたっている夜道を、いつか駒形河岸にまで来ているのだった。

闇太郎は、だしぬけに小刻みな早足になって、駕籠のそばまで駆けつけて、わざと息をきりながら、かぶった手拭をとって小腰をかがめ、