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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一五
うなずいて、
「どれ、その、とやらまで――一ッ走りか?」
肩を入れた後棒は、ほり物は無いが、頬ッぺたに、傷のあとのある、異様な面相。
二人は、もう二度と目と目を見かわす必要もなく、お互に、これから先の行動を、以心伝心、のみこみ合ってしまったのだ。
まさか、たった今、人を殺して来た娘と知れば盗んで逃げようともしなかったであろうが、何分にも、人も寝しずまった真夜中、夜目にも、白い花が咲き出したような、しかも、それが、取りみだし切ッているうつくしいすがたを見たので、持って生れた棒組根性、このままには、見のがせぬと思ったらしい。
何分にも、浪路も、重なる不仕合せ、このかごが、町かごで、提灯にちゃんと店の名でもはいっていたのならよかったが、仕事がえりに、一ぱいやった上りの、内藤新宿の雲助ども、街道すじでも、相当に悪い名を売った奴等につかまったのが因果だ。
この一挺のかご、走りは走りだしたものの、先棒の趾先は、いつまでも、浅草の方角を指してはいないのだ。東南に、急ぐべきを、あべこべに、西北へ、
――ホラショ!
――ホイヨ!
と、走りつづける。
どこをどう駈け抜けたか、淋しい組屋敷がつづいている、牛込のとッぱずれのだらだら坂を、とうにすぎて、ここは、星かげも鄙びている抜弁天に近い田圃中――一軒家があって、不思議にも、