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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
三〇
「やっぱし、千両役者だなあ!」
と、闇太郎は、太い息をついて近づいた。
「これだけの騒ぎに、返り血も浴びねえというのだから驚いたもんだなあ――」
「これで、まあ、長いこと、つきまとった、毒蛇のようなものを、始末をつけてしまいましたが――親分」
と、雪之丞、なだらかな呼吸で、闇太郎をかえりみて、
「もう、残ってはおりませぬか――」
「おいらが斬ったのは、フヨフヨしていたが、それも大てい片づいたようだ。おまはんの刃にかかった奴は、ぎゅうも、すうもなくまいッているよ」
「では、人目にかからぬうち、引きとるとしましょうか――」
「おお、一刻も早く逃げようぜ」
血なまぐさい、生ぬるい風がただよう河岸を、いかつい影と、やさしい姿が、肩を並べるようにして立ち去った。
みちみち、闇太郎が、
「何にしろ、このいきで、ずんずん突ッ込んで行くことだ。あしたはかまわねえから、三斎屋敷に乗り込みねえよ――なあに、万事、スラスラ片づくにきまっている」
「何分相手は、土部一族、強敵に相違ありませぬが、一生をかけての仕事、かならずやりとげて、御覧に入れましょう」
「うむ、その決心なら大丈夫だ」
と、闇太郎ははげますようにいったが、ふと、しんみりした調子になって、