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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

二六

わかったか?」

「かごの中でじたばたしても、引ッくくって持ってきゃあいいんだね――わけはねえ」

と、新吉は何でもなげにうなずいた。

二六

その夜更け――

湯島切通しの、大きな椎の樹の下の暗がりに、人目を避けるように、何か、待ち合せでもしているような振りで、三人の若者が、いずれも、素袷に、弥蔵をこしらえて、夜寒むに胴ぶるいをしながら佇んでいたが、これは、いうをまたず、闇太郎に頼まれて、お初攫いの役目を買った、ならずの新吉と、その一味だ。

「ハ、ハックショイ! やけに冷えて来たぜ」

「うん、もう、じきに師走だものなあ――こんなことなら、燗ざけの二、三本も、注ぎ込んで来るんだっけ」

若い者がつぶやき合うのを、新吉が、

「何でえ、江戸ッ子が、その若さで、水ッ鼻をすする奴があるか――雪が降っても、着物を着て素足に草履、それが、おいらの心意地だぜ――なに、もう少し辛抱しろよ。今夜、仕事がすめば、ゆっくり遊ばしてやらあ――こう、作蔵、てめえ、千住に深間が出来たって話じゃあねえか?」

「え、へ、へ、へ」

と、若者の一人が、笑って、

「なあにネ、そいつがついこないだ、羽州羽黒山のふもとから出て来たというんでしてネ。