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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
二四
三斎隠居は、ぎょっとしたように、闇太郎を見返したが、その目を外らして、苦が笑いした。
「ふうん、成る程、ますます気鋒の鋭い奴だな!」
そして、わざとらしく取ってつけたような快活さで、
「如何にも、旗本の隠居と泥棒でも、一度懇意になった上は、何かの場合、折り入って、相談ごとをする時が無いとも限らぬ、だがまあ、当分は、別に頼むことも無いようだ」
「そりゃあ、泥棒は、あっしの渡世、御隠居さんは、書画骨董、珠玉刀剣が、死ぬ程お好きだということ、何処そこの蔵から、手に入れられねえ宝物を、盗って来い位なら、御相談にも乗りましょうが、弱い者虐めや、清い人を、難儀させるようなことだけは、命を取られても、出来ねえ闇太郎、――それだけは、御承知下せえまし」
と、天地に身の置き所も無い若い盗賊、権勢家三斎を前に置いて、虹の如き気を吐くのだった。
二四
平馬は、三斎隠居の機嫌をとるために、夜陰ながら、路傍で拾って来た、怪賊闇太郎、――それが、隠居の気に入ったらしいのが、初めの中は嬉しかったが、いつまでも、闇太郎、闇太郎で、自分の方を、ついぞ、老人が、振り向いてもくれぬので、何となく、不機嫌になって来た。