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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一三

「あたしが、鉄砲でおどかしているうちに、ズバリと殺っておくんなさいよ――本堂へ引き出すからさ――」

――ケッ、ケッ、ケッ!

と、闇太郎は、声を呑んで嗤わざるを得ない。

――ざまあ見ろ、須弥壇下へくぐって見ろ、雪之丞にゃあ、いつだって、この闇太郎が着いているんだ。馬鹿あめ!

怪賊は闇の中で、ニヤリと白い歯を現して、本堂の方をのぞき込んだ。

一三

一度、雪之丞に打ち倒されて、半死半生の目に合された、剣客や、門弟たち、さすがに不死身で絶気のあとでは、第一の妙薬と、大杯を傾けていたのが、これ等もドヤドヤと立ち上って、お初、平馬のあとを、本堂の方へ跟いてゆく。

それを、錆た燭台の裸蝋燭のあかりで、ニヤニヤしながら眺めていた闇太郎、やがて、奥で――

「おや! これは不思議だ!」

と、お初の甲高な、いくらか取りみだしたような声がして、

「だれか、もっと大きな蝋燭を持って来ておくれよ」

「どうしたのだ! 姿が見えぬのか?」

と、平馬のハッとしたような叫び。

「いいんですよ、その手燭では、あかりが届かないんだから――隅々までわかるように、向うの百目蝋燭を持っておいでなさいよ」