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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
二一
うとは! ああ、堪えがたや、怖ろしや!」
わめき立てて、部屋中をのた打ちまわる、長崎屋、やがて生死も知らず、気を失ってしまうのだった。
二一
そこで、生きながら、鬼に化したような、長崎屋三郎兵衛から、河岸の暗まぎれに、広海屋の赤ん坊を受け取った、雪之丞は、どうしたろう?
彼は、三郎兵衛が、赤子の咽喉に、手をかけて、掴み殺さんばかりの有さまを見て、われ知らず、狂い果てた相手を撫して、敵の子をわが手に抱き取りはしたものの、そして、西も東もしらない、頑是なく、いたいけなこのむつきの子供に、罪も怨みもないと、ハッキリ自分にいい聴かせはしたものの、さりとて、そのまま、広海屋一家の手に戻してやる気にはなれなかった。
かごで、わが宿を差して戻りながら、赤ん坊を抱きしめて、乳母のふところと思っているのか、スヤスヤと、眠りはじめた、ふッくらした寝がおに見入りつつ、彼は、詫びるように、心につぶやいたのだ。
――坊や、堪忍おし――ほんとうは、このまま、お前を、おふくろさんの胸に、かえして上げるのがよいのかも知れぬ。けれども、それは、わしには、出来ないのだ。お前には、すまないと思うけど、お前の親御の、広海屋に、どうしても、この世で、怨みをかえさねば、死なれぬ身――その広海屋に、苦しい、悲しい想いをさせるには、お前をあずかって置か