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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
二
通り越して、鼻先で、へんと、笑って、
――だが、お客で、家の中が、ざわめいているなんざあ、闇太郎さんに、わざわざ仕事を楽にさせてやろうというものだ――まっていろ、今、目のくり玉の飛び出るような目に合せてやるから――
闇太郎、塀について、屋敷横にぐるりと廻って出ながら、
――こう見えて、このおれが、一度足を踏み込んだ以上は、屋敷ん中の隅から隅まで、蔵の中、小屋の蔭、すっかり瞳に映して来ているんだ。門倉平馬も、恩人とやらの三斎さんのところへ、とんだ客を連れ込んだものさ。ふ、ふ、ふ。あの宝ぐらの中にゃあ、公方さまからの頂きものから、在役中の不浄な財宝まで、うんと積んであるだろう――少し今夜は慾張って、貧乏人助けをしてやるか――寒さに向って、まだ単衣ものでふるえている奴もあるんだ。
二
闇太郎、盗んだ宝は、一物のこさず、片っぱしから、恵んだり、使ったりしてしまう性で、新しい施しがしたくなると、どこからか仕入れて来なければならないのだ。
今夜、その目的に選んだのが、三斎屋敷――この家こそ、彼に取って、いわば、わざわざお得意として存在しているようなものだった。