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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
二二
二二
何も知らぬ闇太郎、山ノ宿、雪之丞旅宿の門をくぐると、見知り越しになっている店番の若い衆に――
「若親方はいねえかね? 雪之丞さんは――」
「おッ! 親方――」
若い衆はいつも切ればなれのいい、象牙彫りの親方と思うので、目顔で、歓迎の意を表して、何もかくさず、
「生憎でござんしたねえ、若親方は、ついさき程、どこへかお出かけになりましたが――こないだ火事に逢った、お贔屓さんへ、見舞にゆくとか。大師匠に話しておいでのようでしたよ」
「おお、そうかい――じゃあ、また来ますよ」
のれんを分けて出て、闇太郎、暗がりにたたずんだが――
――こないだ焼けた贔屓といやあ広海屋にきまっているが、さては、いよいよ、三斎屋敷に乗り込むまえに、あっちを荒ごなしにかけようとするのだな。
と、こころにつぶやいて、
――よし、のぞいて見よう。
海運橋の、広海屋までは、かなりあわいがあるから、辻かごを呼ぶ。
いつともなく、また跟けはじめていた二人ざむらい――これも亦、かごを小手まねぎして、
「こりゃ、あれへまいる乗りものを、見えがくれに追うのじゃ――とまればとまり、進めば、すすむ――よいか?」