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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
三
と、雪之丞は畳に手を、
「冥土の父親母親が、草葉の蔭から、さぞお前さまのお心持を、ありがたがっておりましょう」
「いやいや何でもねえことだ」
と、闇太郎は、かなしげに微笑して、
「おいらも、五体五倫をそなえてこの世に生れて出ながら、こんな始末、せめておめえの大望を助けるのが、現世にのこす善根――その善根を、おめえなりゃあこそ積ませて呉れるというものだ。礼をいうのは、こっちのことだ」
三
――大事を取れと、言うて下さるも、わしを思うておいでなさればこそ、油断なく、いそげと言ってくれるも、わが身の心を推量していればこそ――
雪之丞は、この世に享けたいのちを、呪わしく怨じつづけている身ながら、思いやりの深い、師匠、心友の情を想えば、うれしさに涙ぐまれて来る。
――若し、かかる方たちと、何のかなしみも、怒りもなく、楽しく交際うて生きて行ける世の中であれば、どんなにうれしいことであろう――それを叶わずさせたもあの敵どものなせる業――よし、とてものことに、現世ながら、魂を地獄に堕し、悪鬼羅刹の権化となり、目に物見せてつかわそう――
「親分、今宵を限りで、雪之丞は、人界の者ではないとお思い下さりませ。