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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

二三

それよりもサ、まあ、今夜は、落ちついて、あたしと二人で、前祝いを一ぱいやッて、明日になったら、この婆さんにおまかせなさい――屹度、うまく、この玉の始末をして、しばらくぶりで、光ったものの山わけが出来るようにしますから――さあ、断ったお酒でもあろうが、約束かために一ぱい――」

「いいや、婆さん、おれは、本気でこの娘をとどけてやる気なんだよ。雲助の手から奪い上げて、自分のふところをぬくめようとするような、そんな半ちくな悪事は、これまでして来たことのねえおれなのだ」

「おや、大そう、意気なことをおっしゃるねえ」

と、婆さんは、唇を食いそらした。

「それじゃあ、おまえさんは、どうあっても、この娘を、この家から攫っていこうというのかい?」

「攫うも攫わねえも、大たい、婆さんと何のかかわりもねえこった」

「ふうん、えらそうに――ようし、覚えておいで――」

どこまで、図太いお三婆だか、そういうと、つと、立ち上ったが、裏戸に行って、水口の雨戸を開けようとする。

ガタガタやっているうしろから、法印が、

「婆さん、何をはじめたのだ?」

「勝手にさせておくれ。あたしはつい、そこまで行って、島抜けの法印さんというえらいお方が泊っているということを、知らせたい人があるのだから――」