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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一三

そりゃ、貧乏人同士の交際で、軒並びの奴も出来るだけのことはしてくれたが、向う様だって、その日その日に追われているのだ。そこへ持って来て、何しろ、こっちは流れの身。土地に馴染があるわけではなし、仕舞には、医者どのさえ診に来てくれはしなくなった。恨めた身ではねえ、喧嘩にもならねえ。おれは、その時ほど、この世の中が、辛く思えたことはなかったよ――」

闇太郎は、もう笑わなかった。彼は、じーっと、空を見つめるようにしたまま、腕を組んだ。

一三

闇太郎は思い深げに、話しつづけた。

「渡る世間に鬼はなし――なぞというが、といって、仏の顔も三度というからね。世間だって、そうそういつまでも、おれ達をかまってくれるはずがねえ――前かた懇意にしてくれた、江戸のごろつき仲間にも、飛脚を立てたり、手紙をやったりして見たのだが、ろくに返事も来なかった。売り食いするにも種もなし、二人とも――病人ばかりか、この俺まで、もうアゴが干上りそうになっちゃったのだ――とうとう、これまで、あわれみをかけていてくれたような、差配さえ、いつか出てゆけがしのそぶりも見せないでもなくなった。そいつが、ピーンピーンと、こっちの胸にひびくんだね――そこで、おれも考えたんだ。