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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
三
と、わめくと、闇太郎、そのとき、
「おや、おめえの声にゃあ、聴きおぼえがあるようだが――」
三
――たしかに聴き覚えのある声だ――
と、闇太郎が、思わず、そうつぶやいたとき、戸外の相手も、ギクリとしたもののように叫んだ。
「ああ、そういやあ、おまえさんの声にも、覚えがあるが――」
「誰だ? 名乗れ」
「おッ!」
と、外の男は、わめいた。
「こいつあいけねえ! おまはんは!」
逃げ足が立った容子!
闇太郎もハッキリと、今こそ思い出して、ガラリと、遠慮なく、雨戸をあけると飛び出して、
「おめえは、法印! 何で逃げる――」
島抜け法印、まるで思いも懸けぬところで闇太郎に再会したので、尻尾をつかまえられている相手――怖い相手――お初を捕え得ぬうちは、顔の合わせられぬ相手――逃げようとして、足が動かず、立ちすくみになってしまったところを、闇太郎の、すばやい手が、グッと、腕をつかんだ。
「何で逃げる――法印!」
「親、親分、許しておくんなせえ!」
と、法印、白い息を吹き散らして、しどろもどろだ。
「貴さまあ、何だな、法印、あの女ッ子の――お初の奴の手引きをして、不細工に、夜よなか、この宿屋まで、引ッぱって来やがったのだな?」