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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一二
すると、うむ、それは、よき人々に贔屓れておるな――広海屋と申せば、名うての大町人、やがて江戸一にもなるべき人だ――」
「うむ、左様なことを、お城重役が申されていたか――」
広海屋の、栄達を望んでもがきつつある心は、すぐに激しく動揺して、喜色満面。
「ええ、もう、大したお讃めで――」
と、雪之丞は唆り立てて、
「その上、わたくしにはわかりませぬが、何か、よほどむずかしげなお噂もありましたようで、あなたさまについてのお話ゆえ、一生懸命理解いたそうといたしましたが、くわしゅうはのみ込めませず、残念に存じました」
「わが身についての、むずかしい噂――」
広海屋は緊張して、
「気にかかるな? 何事か聴かしてくれ」
一二
雪之丞は、広海屋が、こちらの口車に乗せられ、ぐんと乗り出して来るのを、浅間しいものに眺めながら、
「只今も申しますとおり、わたくしなぞには、良く、呑み込みのいかないお話でござりましたが、何でも、貴方さまが、一決心なされました、お持米とやらを、東におまわしになりませば、大したことになるであろう――と、いうようなことを、しきりに仰有ってござりました」
「何と? 持米を東に廻す!」