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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一六
「いつもいつも、いやに落ちつき払ってさ、高慢ちきに取りすまして、天下で、わたしほど、武術も、芸も、すぐれたものはあるまいと、いわんばかりの顔をしておいでの、雪之丞さん、わちきは、刃ものを取っては、おまはんの敵であろうはずはないけれど、今夜は別だと思ってるのですよ。なぜッて、わちきの掌の中には、こんな魔ものが宿っているのですものねえ――ふ、ふ、紅ッ毛で、天狗鼻の、ちん毛唐という人達も、いい道具を発明してくれたものさ」
と、嘲けったが、急に、乱暴な、ぞんざいな、下卑切ッた口調になって、
「ええ、おい、何とか返事をおしよ。腰が抜けたような顔をして、ぼんやり坐っていないでさ。この短銃はね、決して、舞台の小道具じゃあないのだよ。この曳金に、お初ちゃんの細い細い、ほ、ほ、白魚のような指がさわりゃあ、この可愛らしい銃口から、小ちゃい小ちゃい、小豆つぶのような弾丸が飛び出して、まあ、蝋で作ったといおうか、珠玉をみがいたようだと言おうか、何とも言われず美しい、おまえさんの、その額の真ん中に、ボーンと食い込んでゆくのだよ。ほ、ほ、口惜しそうに、そんなに怖い顔をしたって、駄目の皮さ。