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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一八

実はこれから、くつろいで、寝酒をと思うたところだが、寒さしのぎ、ひと口つき合ってまいられぬか?」

――ふうむ、こいつ、変な気持を起しやがったな――男ッて奴あ、どいつもこいつも何てのろ助ばかりなんだろう――島抜け法印は、谷中の寺にいるばかりじゃあねえ、ここにもいたよ――二本差しなだけで、この男も、あのいが栗とちっとも違やしない。

口では、

「でも、もう大そう遅うござんすし――」

と、しおらしい。

「はじめて上りましたお屋敷で――」

一八

「夜が更けたと申して、拙者に於いては、毛頭かまわぬ――ときどき、晩酌が長引き出すと、夜を徹して飲むことがある位だ。だが、お初どの、そなたの方に――」

と、意味ありげな微笑を、ニタリと送って、平馬――

「そなたの方にひどう差し支えることがあらば――誰か、是非とも逢わねばならぬ人でも待っておッて――」

「ま」

と、お初は仰山そうに、

「そのようなこと、ござんすはずが――さきほども申したと存じますが、こんなお婆さんになってしまっては、かまってくれるものとてありませぬ」

「その癖、役者ぐるいも、しようというのかな?」

平馬は、ひとからみからんだ。