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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一五
平馬、お初の昂然たる気焔を聴いて、今更のように度胆を抜かれている。
――では、この女、何者を、助勢として別にかくしているのであろう――手をあげて合図をすればわれわれより腕の立つ連中が、いずくからか現れて来もするのか!
平馬は、きょろきょろ、光りの届かぬ植込みの影の、暗がりなぞを見まわすようにするのであった。
一五
「ときに、雪さん、どうだね? あたしが、今夜、何か言い出したら、今度こそ、うんと言ってくれますかい」
お初の舌鋒は、ふたたび、雪之丞に、鋭く注がれはじめた。
「今夜こそ、おまはんに負けました――と、あたしの前で手をついて、何でも云うままになりますかい? それを聴きたいものですね」
雪之丞は、心耳をすましている。が、彼の感覚には、何も怪しい気配は感じられぬ。目の前に傷つきうめいている人々の外には、手に立つほどの敵がひそんでいる容子もない。
――女狐よりも狡い奴――どうせ、狡猾な手段で、囚われの家を抜け出して来たに相違ないが、今も今、口先の嚇しにかけて、心を擾させ、何か良からぬ計略をめぐらそうとしているに相違ない。
雪之丞は、明るげに笑って、
「世の中からは、卑しい俳優と、さげすまれてはいるものの、魂では、いかなるもののふにも、負れは取らじと思うているわたし、いつ逢うても、汚らわしいことばかり口にするそ