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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
女がた
一
女がた
一
晩秋の晴れた一日が、いつか黄昏れて、ほんのりと空を染めていた夕映も、だんだんに淡れて行く頃だ。
浅草今戸の方から、駒形の、静かな町を、小刻みな足どりで、御蔵前の方へといそぐ、女形風俗の美しい青年――鬘下地に、紫の野郎帽子、襟や袖口に、赤いものを覗かせて、強い黒地の裾に、雪持の寒牡丹を、きっぱりと繍わせ、折鶴の紋のついた藤紫の羽織、雪駄をちゃらつかせて、供の男に、手土産らしい酒樽を持たせ、うつむき勝ちに歩むすがたは、手嫋女にもめずらしいたけさを持っている。
静かだとはいっても、暮れ切れぬ駒形通り、相当人の往き来があるが、中でも、妙齢の娘たちは、だしぬけに咲き出したような、この優すがたを見のがそう筈がない。
折しも、通りすがった二人づれ――対の黄八丈を着て、黒繻子に緋鹿の子と麻の葉の帯、稽古帰りか、袱紗包を胸に抱くようにした娘たちが、朱骨の銀扇で、白い顔をかくすようにして行く、女形を、立ち止って見送ると、
「まあ、何という役者でしょう? 見たことのない人――」
「ほんにねえ、大そう質直でいて、引ッ立つ扮装をしているのね? 誰だろう?」
と考えたが、