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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一〇

そこで、その道で、音に聞えた、秋帆流の達者たちが、一丁一丁を、きびしく吟味ということになるてえと、困ったことになったのだ、形こそ見本通りに出来ているが、中の機械がやってつけで、とても役にはたたねえという――当然、御上納のときの検査方から、職場検見の役人たちに、お咎めがくることになったのさ」

一〇

闇太郎は、これまで誰にも口外したことのなかった身の上ばなしを、話しだしてはみたものの、矢張り持って生れた気質で、自分のこととなると、

――こんな泣ごとをならべたって、今更どうなるんだ、ばかばかしいじゃあねえか。

というような自嘲に、言葉がとぎれそうになるのだったが、雪之丞が熱心に聞入っている姿にはげまされて、

「なあに、いつの世にだって、ざらにある話なんだ。長いものは短いものを巻くし、強い奴は弱い奴を喰う――今更、ありきたりのことなのだが、そのころ、おれはまだ十七にしかなっていなかった。どうも、このごろ父親の様子が、変だ変だと思っているうち、或る夕方、剣術の道場から、何気なく帰って見ると、家の中がざわついているのさ。駈込んでゆくと、父親の奴腹を切っていやがったんだ。