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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
そして、鐘楼の石垣にとりついて、前庭の方へ目をやったとき、彼は、覚えず、抑え切れず、
「あッ! しめた!」
と、わめきそうになって、声を呑んだ。
その刹那の、闇太郎のうれしさ! 見よ、二十間あまり離れた、本堂の縁先、鈍い、紅い、おぼろな光りに照らされて、あの、なつかしい、心の友が、相もかわらず落ちつきを失わず、しっとりと荒菰の上に座っているのだ。
――ふうむ、じゃあ、あの銃音は、おどかしのためだったのか? おどかしだとすれば、ああしてじっとしているからには、いのち取りの弾丸にやられるはずはねえ。
と、見つめていると、何やら、女の声が、嘲けるように聴えたと思うと、ひらりと、本堂の高縁から、飛び下りた人の影!
――よッ! お初の奴だ! しかも、短銃を持ちゃあがって!
闇太郎は、息を呑んだ。
六
白い脛もあらわに、褄を蹴りみだして、沓脱に跳ね下りると、庭下駄を、素あしに突っかけて、短銃を片手に、雪之丞の前に歩み寄るお初――闇太郎は、俄かに咲き出した毒の花のようなすがたを、呪いに充たされて、みつめ続けた。
――畜生! いけねえ魔物を掌に握っていやあがる――あれせえなけりゃあ、糞! こうしちゃあ見ていねえのだが――