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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「親分が、肩いれをしてくれるとなりゃあ、おいらあ、安心だ――大船へ乗った気になれる――さあ来て下せえ――あすこの軒下にいるのだから――」
法印は、闇太郎の、手を取らんばかりにして、物蔭につれてゆく。
かごが一挺――
法印が、近づいて、バラリと垂れを投げるように上げると、その中に、ぐったりとうつむいていた砕けかけた花のような、白い顔が、ハッとしたように、急に上って、
「お! 雪どののありか、わかったかや!」
「これだ、親分」
「うむ」
闇太郎は、のぞいて見て、つと離れると、
「法印、この娘にゃあ、おれがちょいとゆかりがあるんだ――あとで判る――一時、このおれに、あずけてくれ」
「えッ! 親分に、ゆかりのある女! これがか?」
と、法印は、呆気に取られた。
「うむ、まかせてくれ――なるほど、あわれな身の上の女なんだ」
五
闇太郎はもう一度、かごの中をのぞき込んだ。
「お娘御、お前さんのたずねる人は、あっしが、よく知っていますがね、今のところ、ちょいと、逢ってはならねえことになっています――そりゃあ、芝居をのぞけば、何でもねえのだが、お前さんも、人に顔を見られちゃあいけねえからだだろう――屹度、このあっしが、一度は逢わせて上げますから、今夜だけ、辛抱しちゃあおくんなさるめえか? ねえ、お娘御? 何分、夜更けだし――」