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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一七

恐れ気もなくいってのける闇太郎に、気骨稜々たる門倉平馬の気持は、ますます惹きつけられて、行くらしかった。

「それではどうだ? 拙者ももう、泥棒渡世の足を洗えの、なんのとは、申すまい。その代りせめて今宵だけでも、拙者が連れてまいろうとする所で語り明かさぬか? その位なことは、諾ってもいいだろう。いくらか、義理がある筈だ」

「真綿で首と、お出でなすったね」

と、闇太郎は、ちょいと頭へ、手をやるようにして、首をすくめて、

「どうもそうやんわり出られてはそれもいやだとも、言えませんね。ようがす、お供を致しやしょう」

「早速、承引してくれて、嬉しい」

と、平馬は、蟠りなく言って、

「では、こう参れ」

彼は先に立って、スタスタと和泉橋の方を向いて、暗い柳原河岸を、歩き出した。

懐手で、その後に続く、吉原冠りの闇太郎だ。

一七

吉原冠り、下ろし立ての麻裏の音もなく、平馬の後からついて行く闇太郎――、河岸は暗し、頃は真夜中。いい気持そうに、弥蔵をきめて、いくらか、皺枯れた、錆た調子で、

たまさかに

一座はすれど

忍ぶ仲

晴れて

顔さえ

見交わさず

まぎらかそうと

自棄で飲む

いっそしんきな