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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
七
「この間、御蔵前というところでお目にかかったとき、お別れしたあとで、ついした事からそのお名前を、他人から伺いましたので――」
闇太郎は頭を掻いてみせて、
「隠すより現れるはなしっていうが、その諺は、ちょいとこちとらにゃ辻占のよくねえ文句さ」
そんな戯言をいいながら、茶道具を並べて、器用な手つきで、きゅうすに湯をそそぐのだった。
雪之丞は、苦い、香ばしい茶を、頂いて服んだ。今夜一晩、飲みたくもない酒を強いられたあとなので、この一碗にまさる美味はないように思われた。
闇太郎は、雪之丞が心おきなく、目の前に坐っているのを見るのが、嬉しくてたまらぬというように見えた。
「それにしても、お前さんが、あっしの身許をしりながら、家まで来てくれた気持は、この闇太郎一生の間わすれられねえだろう」
と、人なつッこい眼付きでいうのだった。
七
雪之丞はさり気なげに、
「たといあなたが、どのような御商売をなさってお出でなさろうと、あなたとわたくしの間は、そういう方にかかわりなく、御縁があったのですから――あなたは最初から、わたくしに、御親切でござりました」
「なあに、あの並木の通りで、つがもねえ素浪人が、お前さんに喧嘩を売ったとき、お前さんの眼のくばり、体のこなし、差出たことをするにもおよばねえとは思ったのだが、なにしろ、お前さんにはじめて